
不動産売却の流れが分からず、「査定の前に何を決めればよいのか」と迷っていませんか。結論から言えば、売却は査定から始めるのではなく、目的・期限・手取り額を先に整理してから進めるべきです。空き家相談士の知見と不動産仲介・買取の実務をもとに、失敗を避ける判断軸を整理します。

不動産売却の流れとは、売却目的の整理、相場確認、査定、媒介契約、販売活動、売買契約、決済・引き渡しまでの一連の手順です。東日本レインズ「住まいを売りたい」でも、相談、査定、媒介契約、物件登録、購入申し込み、売買契約、引き渡しという流れが示されています。
いま不動産売却の流れを早めに把握すべき理由は、家を「持ち続けるリスク」も大きくなっているためです。総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%で過去最高でした。
一方で、売れる不動産は動いています。東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向 2025年」によると、首都圏の中古マンション成約件数は49,114件、中古戸建住宅の成約件数は21,632件でした。つまり売却は、焦って手放す話ではなく、資産をいつ・いくらで・どの方法で現金化するかを決める資産形成上の判断です。

最初に行うべきことは、「いくらで売れるか」より先に「なぜ売るのか」を言語化することです。住み替え、相続、親の家の整理、投資物件の出口、住宅ローン残債の整理では、選ぶべき売却方法が変わります。
実際のご相談で多いのは、親世代が「まだ売るつもりはない」と考え、子世代が「将来の管理が不安」と感じているケースです。この温度差を放置すると、空き家化、固定資産税、修繕費、相続時の名義整理が一度に重なります。
判断軸: 売却時期と購入時期のズレ
向きやすい方法: 仲介または買取保証
判断軸: 名義、荷物、税金、家族合意
向きやすい方法: 仲介または即時買取
判断軸: 管理費、修繕リスク、防犯
向きやすい方法: 買取も検討
判断軸: 利回り、賃貸中か空室か
向きやすい方法: 投資家向け仲介
判断軸: 残債額、抵当権、手取り
向きやすい方法: 査定後に個別判断
次に相場確認です。東日本レインズ「住まいを売りたい」では、不動産会社がレインズを利用して相場や取引事例を確認するとされています。売主側も、近隣の売出価格だけでなく、成約価格に近い情報を見る意識が必要です。
売出価格は「希望価格」であり、成約価格は「市場が受け入れた価格」です。この差を理解しないまま高値で出すと、販売期間が長引き、値下げの印象が残りやすくなります。
私たちの経験では、初めての売却ほど「思い出の価格」と「市場価格」が混ざりやすくなります。親の家や長年住んだ家ほど、価格の話をいきなり始めず、維持費、今後の利用予定、家族の負担から話す方が合意形成は進みます。
査定では、机上査定と訪問査定の違いを押さえます。机上査定は周辺事例や面積、築年数をもとに概算を出す方法で、訪問査定は室内状態、日当たり、管理状況、越境や境界、リフォーム履歴まで見たうえで価格を出す方法です。
不動産売却の流れで重要なのは、査定額を「一番高い会社を選ぶ材料」にしないことです。査定額は売れる保証額ではなく、販売戦略の提案額です。
査定書を見るときの確認ポイント
査定後は媒介契約を選びます。東日本レインズ「媒介契約制度」によると、媒介契約には専属専任媒介、専任媒介、一般媒介があります。専属専任媒介と専任媒介は契約有効期間が3か月以内で、専属専任は媒介契約締結日の翌日から5日以内、専任は7日以内にレインズ登録義務があります。
依頼できる会社: 1社
レインズ登録: 5日以内
業務報告: 1週間に1回以上
向いている人: 早く密に進めたい人
依頼できる会社: 1社
レインズ登録: 7日以内
業務報告: 2週間に1回以上
向いている人: 窓口を一本化したい人
依頼できる会社: 複数社
レインズ登録: 任意
業務報告: 任意
向いている人: 情報を広く出したい人
売主にとって大切なのは、契約名そのものよりも、販売活動の透明性です。登録証明書を受け取り、レインズ登録内容や取引状況を確認することで、「本当に市場に出ているのか」を把握できます。
販売活動では、価格、写真、内覧対応、広告範囲、買主候補への説明内容が成果を左右します。特にファミリー向け物件では、学区、通勤、日当たり、収納、管理状態など、購入後の暮らしを想像できる情報が重要です。
実際のご相談で多いのは、「内覧は入ったが申し込みが来ない」という悩みです。この場合、価格だけが原因とは限りません。室内の第一印象、写真の見せ方、販売図面の説明不足、買主が不安に感じる修繕履歴の未整理が影響していることもあります。
購入申し込みが入ったら、価格だけで判断しないことが大切です。住宅ローン利用の有無、手付金、引き渡し希望日、契約不適合責任の条件、残置物の扱いなどを確認します。
売買契約では印紙税も発生します。国税庁「不動産譲渡契約書及び建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置の延長について」によると、令和9年3月31日までに作成される不動産譲渡契約書は軽減措置の対象で、契約金額1千万円超5千万円以下の軽減後税率は1万円です。
また、マイホーム売却では税金の確認も欠かせません。国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」によると、一定要件を満たす居住用財産の売却では、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。
最後は残金決済と引き渡しです。買主から残代金を受け取り、所有権移転、鍵の引き渡し、住宅ローンが残っている場合は抵当権抹消を同日に進めます。
住宅ローンが残っている家を売る場合、金融機関との事前調整が必要です。売却代金でローンを完済できるか、自己資金を足す必要があるかによって、手続きの難易度が変わります。
法務局資料「抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税」によると、抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円です。土地1個と建物1個を同時に申請する場合は2,000円となります。
売買成立時の成功報酬です。確認先は不動産会社です。
売買契約書に貼付します。確認先は国税庁です。
ローン完済時に必要です。確認先は法務局・司法書士です。
土地や戸建てで必要になる場合があります。確認先は土地家屋調査士です。
利益が出た場合に検討します。確認先は税務署・税理士です。
住み替え、相続物件で発生しやすい費用です。確認先は専門業者です。
国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」では、仲介手数料は定められた上限額の範囲内で、媒介契約の締結に際して合意しておくことが重要とされています。費用は売却後に初めて見るのではなく、査定段階で手取り表として確認しましょう。
不動産売却で失敗しないコツは、価格、期限、方法を同時に決めることです。高く売りたい気持ちだけで進めると、販売期間が延び、住み替え資金や相続手続きの予定が崩れることがあります。
特に40〜60代のオーナーは、親の家、自宅、投資物件が人生設計に重なりやすい時期です。定年後の住み替え、親世代の施設入居、お子様世代への資産承継を考えるなら、売却は単なる換金ではなく、家計と相続の設計です。
原因: 売出価格と成約価格を混同している
対策: 査定根拠と価格見直し日を決める
原因: 諸費用と税金を後回しにしている
対策: 査定時に手取り表を作る
原因: 設備や雨漏り履歴が整理されていない
対策: 物件状況報告書を丁寧に確認する
原因: 売却と購入の時期が合わない
対策: 売り先行・買い先行を比較する
私たちの経験では、初回相談で「売却したいです」と言われる方の多くが、実際には「売却すべきか迷っています」という段階にいます。この迷いをそのままにせず、数字に置き換えることが、後悔を減らします。
たとえば、空き家になった実家を売るか残すか迷う場合は、固定資産税、管理費、修繕費、将来の解体費、親族間の合意コストを見ます。売却額だけでなく、持ち続けた場合の年間負担を見える化すると、判断しやすくなります。

不動産売却の流れを理解したうえで、最後に決めるべき大きな分岐が「仲介」か「買取」かです。仲介は市場で買主を探す方法、買取は不動産会社が直接買い取る方法です。
高値を狙いやすいのは仲介ですが、時間と内覧対応が必要です。早く現金化しやすいのは買取ですが、一般的には市場価格より低くなる傾向があります。
仲介と買取のどちらか一方を押し付けるのではなく、時間・手取り・心理的負担を並べて比較します。初めての売却では、金額だけでなく「その売り方で家族が納得できるか」も大切です。
不動産売却の流れを家計の視点で見ると、判断はより明確になります。売却代金を老後資金に回すのか、住み替えの頭金にするのか、相続人で分けるのかによって、最適な売り方は変わります。
株式会社マーシャルアーツでは、不動産売却の流れや売却方法に関するご相談を無料で承っております。
空き家相談士・一級建築士事務所として、お客様のライフプランに沿った最適な選択肢をご提案します。