賃貸住宅の家賃は、入居者の入れ替わりや契約更新のタイミングで改定されるため、食料品や日用品などよりも遅れて上昇します。また、一度上がった家賃は次の更新まで維持されるので、物価の上昇が落ち着いても下がりにくい傾向があります。
こうしたことから、家賃の上昇傾向はまだしばらく続くと予想されます。今賃貸にお住まいの方は、今後家賃が上がることを前提に、賃貸に住み続けるのか購入するのかを、今一度検討している必要がありそうです。
現在の家賃支出をそのまま住宅ローンの返済に充てた場合、どのくらいの借入が可能なのかを算出してみましょう。以下の公式を使うと、月々の返済額から逆算した借入可能額の目安を求めることができます。
例えば、現在の家賃が月12万円、金利0.5%、35年返済の場合の借入可能額は、
12万円 ÷ 0.002595 = 約4,624万円 になります。もし、家賃が13万円に上がったとすると、
13万円 ÷ 0.002595 = 約5,009万円 となり、借入可能額が385万円増えることがわかります。
住宅ローンには審査がありますので、必ずこの額を借りられるとは限りませんが、現在12万円の家賃を支払っている人は、今後の値上がりを踏まえると、4,000~5,000万円が購入予算の目安になります。
同じエリア内の新築物件でも、家賃と同額で購入可能であることがわかります。また中古であれば、すべてのエリアで家賃以下の支払いとなり、賃貸に住み続けるより、購入した方が、住宅コストが下がります。
また、都内から郊外へ転居するケース、例えば中野区の賃貸マンションから藤沢市の中古一戸建に住み替えた場合には、それまで25.8万円かかっていた家賃が、半額以下の10.9万円の返済になり、川越市なら7.5万円、船橋市なら6.1万円とさらに安くなります。
これはあくまで平均値での比較で、実際の支払いは購入する物件によりますが、賃貸から持ち家に住み替えても、さほど支出が増えることはなく、都心から郊外に住み替えれば住宅コストを下げつつ、今よりも広い物件に住むことも十分可能なことが分かります。
2013年の時点では、Aさんは資産であるマンション(4,620万円)と、同額の負債(住宅ローン)がありますので、正味の資産(資産-負債)はゼロ。Bさんはそもそも賃貸ですので、資産も負債もゼロとなります。
そして10年後の2022年、Aさんの資産(マンション)は8,300万円、負債(住宅ローン)は3,381万円となり、10年間に支払った現金1,440万円を引いた正味の資産は、3,479万円と大きくプラスになっています。一方、賃貸に住み続けたBさんは、資産・負債ともにゼロで、10年間で支払った家賃を引くと、正味の資産はマイナス1,440万円となります。
やや極端な例ではありますが、不動産価格の上昇局面では、資産形成という観点からも賃貸より購入の方が有利であり、長期で見ると大きな差になることが分かります。
住まいの購入は、仕事や収入、子どもの入園・入学など、様々な要因に左右されますが、総じて早く買った方がメリットは大きいと言えます。その大きな理由は、賃貸に住んでいる間の家賃です。例えば家賃が月10万円なら年120万円、5年で600万円という多額の出費となります。「頭金を貯めてから・・・」という方も多いのですが、家賃を払いながら頭金を貯めるのは容易ではなく、コツコツ貯金している間に物件価格が上がってしまうケースもよくあります。
また現在の住宅ローン(変動)は、0.5%前後の超低金利が続いています。この低金利を活かすという意味でも早めの検討をおすすめします。
ここまで見てきたように、今後、家賃の上昇が見込まれる中で、住まいを「借りる」か「買う」か、今一度考え直す時期に来ています。
多額の借入をともなう住宅購入には漠然とした不安がつきまといますが、本当に家賃並みの支払いで買えるのか、自分の年収だといくらくらいのローンが組めるのか、将来的に値上がりする見込みはあるのかなど、しっかりシミュレーションすることが大切です。これらをひとつひとつ確認することで不安が払拭されますし、納得感のある購入ができると思います。
都市部で賃貸マンション家賃が上昇する一方、コロナ禍から値上がりが続いていた中古マンション・一戸建の価格は一部でピークアウト感も出始めています。ぜひこの機会に不動産会社のスタッフなど専門家のアドバイスを受けながら検討を始めてみてはいかがでしょうか。