お役立ち情報

  1. TOP
  2. お役立ち情報
  3. 中国人に「日本で宅建取得ブーム」の兆し、国内住宅市場は買うのも売るのも中国人に?
2024.08.15
中国人に「日本で宅建取得ブーム」の兆し、国内住宅市場は買うのも売るのも中国人に?

中国資本が、日本の住宅市場に熱視線を送っている。中には宅建資格の取得に乗り出す中国人もいて、不動産取引への強い意欲を見せている。不動産の中でも住宅は、オフィスビルや商業施設とは異なり、国民の生活と密接に関わる。健全な住宅市場を維持するためにも、国や業界は目先の利益を追うだけでなく、ルールの明確化や適正取引の推進に目を向けなければならないだろう。(ジャーナリスト 姫田小夏)

中国人の間で広まる日本の宅建取得ブーム
「取引先の会社で働いていた中国人の女子社員、宅建を取って独立したらしいよ」――ある日本企業の社員の間でそんなうわさが流れた。うわさの中国人女性は最近、数億円の物件を仲介して数百万円の手数料を手にしたという。

宅建(宅地建物取引士)とは、宅地や建物の売買や賃借などの不動産取引を行うために必要な国家資格である。資格試験は年1回、合格率も例年16%前後と、資格試験の中でも難しいとされている。資格取得後に、営業保証金を供託した旨、免許権者(都道府県知事または国土交通大臣)に届け出をすれば事業者になることができる。

 中国人が日本の不動産に食指を動かし始めたのは、2000年代後半からのことだった。その後、2010年代の訪日旅行ブームをきっかけに、多くの中国人が日本の不動産の安さに気づいた。ホテルや旅館、あるいは民泊物件などを購入し、自前の宿泊施設で中国人客を囲い込もうとする中国系事業者があちこちに出現した。

 もっとも、このときはまだ日本の不動産業者を通して物件の取引を行うのが一般的だった。しかし、最近ではさらに川上に参入し、自らが不動産業を営むようになった。中国人による日本の不動産業界への積極参入の背景には、中国にはない土地所有権の取得や円安、利回りのよさ、物件の割安感などの要因がある。

「かつて日本の不動産業界はとてもドメスティックな業界でした」と語るのは、大手不動産企業を退職した松木大輔さん(仮名・60代)だ。「バブル期に日本の不動産企業は海外不動産に投資をしたものですが、まさか外資が日本の不動産市場にこれほど目を向ける時代になるとは」と驚きを隠さない。

 こうした事情もあり、日本の国も業界も外資による投資への対応は後手に回りがちだ。しかし、他の先進国では、外資や外国人が簡単には不動産市場にアクセスできない仕組みがすでに構築されている。

 例えば、ドイツでは外資が不動産を取得する場合は事前の登録が要求される。オーストラリアでは外国人による不動産購入に規制を設けており、 FIRB (外国投資審査委員会)による承認が必要となる。カナダでは今年から、外国人による住宅購入が2年間禁止となった。
 
 不動産の中でも住宅への投資は、オフィスビルや商業施設とは異なり、人が住む家と密接に関連する。そのため、「経済が回ればいいじゃないか」という発想だけでは済まされない。中国でも住宅市場に仕掛けられたマネーゲームで国民がひどい目に遭った。国民生活保護の観点から、日本においても、外資による投資への審査や適正取引の監視のためのメカニズム強化は急務だろう。